+9の授業 / 座学 09

カメラワーク

01 / カメラワーク基礎

カメラワーク基礎

カメラには、単にカメラを動かす技術ではなく、
観客に対して「伝える役割」がある。

同じキャラクターアニメーションでも、
カメラの位置やレンズ、動かし方を変えることで、
映像の印象は大きく変化する。

「意図次第」。

映像では、観客はカメラを通して場面を見る。
そのため、制作者はカメラによって
観客の視線を誘導し、
必要な情報を適切な順番で見せる必要がある。座学 03ステージング
カメラを配置するときは、最初に次の3点を考える。

何を見せたいのか?

  • キャラクターの感情
  • 全身のアクション
  • キャラクター同士の関係
  • 背景や世界観
  • アイテムなどの重要な情報

どのように感じてほしいのか?

  • 強そう
  • 弱そう
  • 怖い
  • 安心する
  • 緊張する
  • 寂しい
  • 爽快
  • 不安定

なぜ、そのカメラを選ぶのか

「格好いいから」「映画っぽいから」だけでなく、
カメラの目的(意図)を説明できるようにする。

02 / ショットとアングル

ショットサイズとカメラアングル

ショットサイズ

ショットサイズとは、画面の中に人物や背景を
どの程度入れるかを表す考え方。
ショットサイズによって、
観客が注目する情報が変わる。

エクストリームロングショット

人物が非常に小さく、
背景や空間を大きく見せる画角。

遠くから見下ろした広い景色の中に、人物が小さく立っている画面
  • 世界観や場所の説明
  • キャラクターの孤独感
  • 広大さの表現
  • シーンの導入

ロングショット

人物の全身と周囲の空間が見える画角。

人物の全身と、周りの柱や箱まで見える画面
  • 人物と背景の位置関係
  • 移動やアクション
  • 複数人の配置
  • シルエットや全身ポーズ

フルショット

人物の頭から足先までを画面に収める。

人物の頭から足先までが画面に収まっている画面
  • 全身の演技
  • 歩きや走り
  • 格闘アクション
  • キャラクターの立ち姿

アニメーションのポーズを確認しやすい一方、
表情は伝わりにくくなる。

ミディアムショット
(ウエストショット、バストショット)

腰や胸付近から上を映す。

人物の腰から上が映っている画面
  • 会話シーン
  • 上半身のジェスチャー
  • 表情と身体の動きを同時に見せる
  • 日常的な場面

クローズアップ

顔を大きく映す。

人物の顔が画面の大部分を占めている画面
  • 感情を見せる
  • 重要な反応を見せる
  • 観客を人物に集中させる
  • 緊張感を高める

クローズアップでは、小さな表情変化も目立つ。

エクストリームクローズアップ

目や口、手、アイテムなど、
一部分を極端に大きく映す。

人物の目のあたりだけを大きく映した画面
  • 強い緊張感
  • 重要な情報の強調
  • 恐怖や不安
  • 決定的な瞬間

多用すると映像が大げさになるため、
重要な場面に限定して使用する。

カメラアングル

カメラアングルとは、
被写体をどの高さや角度から見るかという考え方。
アングルを変えることで、
人物の立場や心理的な印象を変えられる。

アイレベル

人物とほぼ同じ高さから撮影。

人物の目の高さから水平に見た画面
  • 自然
  • 客観的
  • 日常的
  • 安定している

会話シーンや基準となるカメラとして使われる。

ハイアングル

人物より高い位置から見下ろす。

高い位置から人物を見下ろした画面。人物が小さく見える
  • 弱い
  • 小さい
  • 不利
  • 孤独
  • 守ってあげたい

広い空間や位置関係を見せる目的でも使われる。

ローアングル

人物より低い位置から見上げる。

低い位置から人物を見上げた画面。人物が大きく見える
  • 強い
  • 威圧的
  • 大きい
  • 支配的
  • 英雄的

ローアングルだから必ず格好よくなるわけではない。
人物のポーズ、表情、
ライティングと組み合わせて使用する。

真上からのアングル

被写体を上空から見下ろす。

真上から人物を見下ろした画面。頭と肩だけが見える
  • 人物や物の配置を見せる
  • 状況を客観的に説明する
  • 人物を小さく見せる
  • 非日常的な印象を作る

ダッチアングル

カメラを横方向に傾け、水平線を斜めにする。

カメラを横に傾けて、地面と柱が斜めになった画面
  • 不安
  • 混乱
  • 異常
  • 緊張
  • 不安定

強い効果があるため、
明確な意図がある場面で使用する。

03 / レンズと動き

レンズとカメラの動き

動画は ▶ で再生できる。
上=外から見たカメラの動き(黄色はカメラに写る範囲)、
下=カメラに映る画面。

レンズと焦点距離

Mayaのカメラでは、
Focal Lengthの値によって画角と遠近感が変化する。

広角レンズ

焦点距離の数値が小さいレンズ
(パースが効いている状態)。

特徴

  • 広い範囲が映る
  • 遠近感が強くなる
  • 手前の物が大きく見える
  • 奥行きが強調される
  • 動きが速く感じられる

適した場面

  • ダイナミックなアクション
  • 狭い室内
  • スピード感のある移動
  • 誇張された構図

人物の顔に近づきすぎると、
顔の形が大きく歪むことがある。

望遠レンズ

焦点距離の数値が大きいレンズ
(パースが効いていない状態)。

特徴

  • 映る範囲が狭くなる
  • 遠近感が弱くなる
  • 前後の距離が圧縮されて見える
  • 背景が人物に近づいて見える
  • 落ち着いた印象になる

適した場面

  • 表情を自然に見せたい場面
  • 緊張感のあるクローズアップ
  • 遠くから人物を狙う構図
  • 背景と人物を重ねたい場面

カメラの動き

カメラを動かす場合は、
動かすこと自体を目的にしてはいけず、
カメラが動く理由(意図)を考えることが重要。

パン(レフト / ライト)

カメラの位置を変えず、左右に回転させる。

  • 横方向に移動する人物を追う
  • 視線を別の対象へ移す
  • 空間を順番に見せる
  • 新しい情報を画面内に入れる

ティルト(アップ / ダウン)

カメラの位置を変えず、上下に回転させる。

  • 高い建物を見せる
  • 人物の全身を順番に見せる
  • 上下方向の動きを追う
  • 大きさや高さを強調する

現場によっては、
「パンアップ/パンダウン」とも呼ぶ。

ドリー(イン / アウト)

カメラ自体を前後に移動させる。

  • 人物に近づく
  • 人物から離れる
  • 感情への集中を強める
  • 空間の奥行きを見せる

カメラが実際に移動するため、
人物と背景の見え方が変化する。

トラック

カメラ自体を左右に移動させる。

  • 横移動する人物を追う
  • 空間を横方向に見せる
  • 被写体との距離を保ちながら並走する

ペデスタル(アップ / ダウン)

カメラ自体を上下に移動させる。
ティルトとは異なり、
カメラの向きを変えずに高さを変更する。

オービット

被写体の周囲を回り込むようにカメラを移動させる。

  • キャラクターや物体の立体感を見せる
  • 状況の変化を強調する
  • 印象的な登場シーン
  • アクションの見せ場

ズーム(イン / アウト)

カメラの位置を動かさず、焦点距離を変更する。
画面上では被写体が大きくなるが、
被写体と背景の位置関係は基本的に変わらない。

混同しやすい動き

画面の中では似た動きに見える組み合わせ。
カメラの位置を変えないか、
カメラ自体が動くかで分かれる。

方向位置を変えない
(向きやレンズを変える)
位置を変える
(カメラ自体が動く)
左右パントラック
上下ティルトペデスタル
前後ズームドリー

ドリーとズームの違い

ドリーとズームは、
どちらも被写体が大きく見えるため
混同されやすい操作。

上はドリー、下はズーム。
人物が同じくらいの大きさになった時の、
背景の見え方を比べる
比べる所ドリー(イン / アウト)ズーム(イン / アウト)
カメラカメラ自体が移動するカメラの位置は変わらない
焦点距離が変化する
遠近感遠近感が変化する遠近感の変化はドリーより少ない
見え方手前と奥の物の位置関係が変わる画面の一部を拡大するように見える
印象空間に入り込む印象になる―

両者を同時に逆方向へ変化させると、
人物の大きさを保ちながら
背景の見え方を変える、
ドリーズームという表現も可能。

ドリーズームの例:カメラが近づきながら、
焦点距離を短くしている
04 / 画面構成

画面構成と位置関係

カメラを置くときは、
被写体を画面の中央に入れるだけでは不十分。
観客がどこを見るかを考え、
画面内の要素を配置する。

三分割法

画面を縦横それぞれ3分割し、
線や交点付近に重要な要素を置く方法。

画面を縦と横に3つずつ分ける白い線と、その交点。人物は左の縦線の上に立っている
白い線が三分割の線。
人物を左の線の上に置いている

三分割法は絶対的なルールではなく、
構図を考えるための基準。

ヘッドルーム

人物の頭と画面上端の間にある余白。
余白が多すぎると人物が小さく見え、
少なすぎると窮屈に見える。
ショットサイズに応じて適切な量を調整する。

頭の上の余白を比べた3枚。左は余白が多すぎ、中央は適切、右は少なすぎて頭が上の端に当たっている

ルックルーム

人物が見ている方向に作る余白。
視線の先に空間を作ることで、
人物が何かを見ていることが伝わりやすくなる。
反対側に余白を作ると、
人物が追い詰められているような
印象を作ることもできる。

上は人物が画面の左にいて、見ている右側に余白がある良い例。下は右にいて、見ている方向に余白がない例

リードルーム

人物や物体が移動する方向に作る余白。
進行方向に余白がないと、
被写体が画面の端にぶつかっているように見える。

上は人物が左にいて、進む右側に余白がある良い例。下は右端にいて、進む方向に余白がない例

ネガティブスペース

人物や物が置かれていない空間。

何もない広い地面と空の右端に、人物が小さく立っている画面
  • 孤独感を作る
  • 視線を誘導する
  • 不安を作る
  • 画面を整理する
  • 次に何かが現れる予感を作る

余白は、何もない場所ではなく、
演出に使うための空間。

180度(イマジナリーライン)ルール

2人の人物が向かい合っている場合、
2人を結ぶ線をイマジナリーラインという。

左上は上から見た図。向かい合うAとBの間に黄色のイマジナリーラインがあり、カメラ1と2は線の手前側、カメラ3は線を越えた奥側にある。カメラ1と2の画面ではAが左・Bが右だが、カメラ3の画面では左右が入れ替わっている
カメラ1・2は線の同じ側。
カメラ3は線を越えたので、
AとBの左右が入れ替わって見える
180度ルールを守った場合
  • 人物の左右関係が維持される
  • 観客が位置関係を理解しやすい
  • 会話の流れが自然に見える
ラインを越えた場合
  • 人物の左右が逆転して見える
  • 2人が同じ方向を向いているように
    見えることがある
  • 観客が空間を理解しにくくなる

ラインを越えること自体が禁止されているわけではない。
混乱や違和感を意図的に作る場合や、
カメラの移動によって位置関係を
説明できる場合には使用できる。

スクリーンダイレクション

スクリーンダイレクションとは、
画面の中で人物や物体が進む方向のこと。
例えば、あるショットで人物が
画面の左から右へ進んでいる場合、
次のショットでも基本的には同じ方向に進ませる。
方向が急に逆転すると、
観客は人物が引き返したと感じる可能性がある。

上の段はショット1で右へ進む人物が、ショット2でも右へ進んでいる良い例。下の段はショット2で左向きになり、引き返したように見える例
上:ショット2も同じ向き(○)
下:ショット2で向きが逆になり、
引き返したように見える(×)

注意する場面

アイライン

アイラインとは、人物が見ている方向を示す線。
人物の視線と、
その次に映る対象の位置関係を合わせることで、
観客は人物が何を見ているのか理解できる。

上の段は、背の高いAが見下ろし、背の低いBが見上げていて視線が合う良い例。下の段は、どちらもまっすぐ前を見ていて視線が合わない例。黄色の矢印は視線の向き
黄色の矢印=視線の向き
上:背の高いAは見下ろし、
低いBは見上げる(○)
下:どちらもまっすぐ前を見ていて、
視線が合わない(×)

押さえどころ

  • 顔の向き
  • 目線の方向
  • 視線の高さ
  • 相手との位置関係
  • 次のショットとのつながり

顔だけを相手に向けても、
目線が合っていなければ違和感が生じる。

05 / カメラアニメーション

カメラアニメーション

カメラもキャラクターと同様に、
アニメーションの原則を意識して動かす。

加速と減速座学 03スローイン・スローアウト

カメラが急に動き始め、
急に停止すると機械的に見える。
基本的には、
動き始めと停止時に適切な加速と減速を加える。

ただし、衝撃や驚きを表現する場合には、
あえて急な動きを使用することもある。

動きのタイミング

カメラがキャラクターより先に動くか、
後から追うかによって印象が変わる。

キャラクターより先に動く場合

  • 次の行動を予告する
  • 進行方向を見せる
  • 計画された印象になる

キャラクターを後から追う場合

  • 突発的な動きに見える
  • 記録映像のような印象になる
  • 勢いや混乱を感じやすい

シチュエーションに合わせて、
カメラを先に動かすか、後から追うか?を考えること。

カメラを止める判断

カメラは常に動かす必要はない。
固定カメラ(Fixカメラ)にも次の利点がある。

  • キャラクターの演技に集中できる
  • 構図が安定する
  • ポーズやシルエットが伝わりやすい
  • 落ち着いた印象になる

カメラを動かさなくても成立する場合は、
固定カメラも有力な選択肢になる。

Mayaで確認する主な項目

項目説明
Near Clip Planeカメラに近すぎる物体を表示しない距離。
数値が大きすぎると、
カメラに近いモデルが消えることがある。
Far Clip Planeカメラから遠すぎる物体を表示しない距離。
広い背景が消える場合は、この値を確認。
Focal Lengthレンズの焦点距離を設定。
数値を小さくすると広角になり、
数値を大きくすると望遠になる。
Rollカメラのロール。
エイムカメラ時、カメラ自体のZ軸回転には、
このパラメータを使用する。
※エイムカメラ=注視点の方を向き続けるカメラ
(作成 > カメラ > カメラおよびエイム)
Resolution Gate最終的にレンダリングされる画面範囲を表示。
カメラアニメーションを作る時、
Resolution Gateを表示し、
最終画面の内側で構図を確認する。
Film Gateカメラのフィルムサイズを基準にした範囲を表示。
Resolution Gateとは範囲が異なる場合があるため、
最終出力の確認にはResolution Gateを基準にする。
Safe Action重要な動きや人物を、
安全に表示できる範囲の目安。
Safe Title文字や字幕を安全に配置できる範囲の目安。
Maya のビューにゲートを4つとも表示した画面。外側から Film Gate、Resolution Gate、Safe Action、Safe Title の範囲を黄色の枠で示し、それぞれの枠の線の上に名前の札がある。Film Gate は Resolution Gate より縦に広い
黄色の枠が、それぞれの範囲(Maya のビューの表示)。
この例では、Film Gate が
Resolution Gate より縦に広い